「……ところで、神崎さん。さっき、家に送らせることは期待させることだって言ってましたよね?」

「ん?」

お互い振り向いて、パチリと視線が合う。

「じゃあ、神崎さんも、昔、私を家に送ってくれる度に、期待してたってことですか?」

飲み会があるたびに、神崎さんは私を家まで送ってくれた。

毎回、玄関の前で、はいさようなら、とばかりにお別れしていたけれど。

もしかして、一回くらいは、部屋にあげてほしいなんて思ったことがあったのかな……?

……ないな。神崎さんに限って。

ばーか、自惚れるな、そんなことを言ってあしらわれるかと思ったけれど。

「……少し、違うな」

神崎さんはフロントガラスの奥に続く道路を見据えながら、静かに答えた。

「大事にしてる部下と関係を持とうなんて、考えなかった。……ただ、他のやつに送らせたくなかったのは事実だな」

ドキン、と大きく鼓動が跳ねる。