「だから言ったんだ。一度たがが外れたら、そのままずるずるいきそうだって」
現在時刻、八時半。このままいけば、ギリギリ定時に間に合うかどうかってところだ。
私の家に向かって車を走らせながら、神崎さんは誘惑に負けてしまったことを猛省しているようだった。
「だから言ったじゃないですか。朝からこんなこと、ダメだって」
「お前だってノリノリだったくせに」
「ノリノリなんかじゃ!」
「キスすると、すぐその気になるだろ、単純なヤツ」
赤信号の合間を縫って、隙ありとばかりに私の唇を奪おうする。
「も、もう! 運転に集中してください!」
叱咤しながらも、すぐに顔が赤くなってしまうのが悔しい。
そんな私を見透かすように、神崎さんはフンとしたり顔で私を見下ろした。



