クラリと逆上せる様な心地の良い感覚を舌から得て、それに満足しながらゆっくりと顔の距離を離せば視線に絡むのは明度の高い灰色の双眸。

それがほんの少しばかり予想外だと言いたげに揺れて見えたのは気のせいか。

確かめるより早くその双眸はいつもの妖艶さを孕んで私を見つめ返し、口元からはククッと楽し気な音が静かに響いた。

「本当……誘われる。【コレ】は契約続行のご褒美だったんだけどな」

そんな風に口の端の傷痕に触れて『ご褒美』だなんて示す彼にはこちらもクスリと愉快を示す。

「じゃあ一石二鳥でしょ?私から捕まりに来て契約続行させてあげたんだから貰って当然のモノだわ」

「ゲームの賞品は?」

「言ったでしょ?捕まりに来てあげたのは私。それに印に触れるより早く契約を続行させたの。つまり勝敗なんてあって引き分け、口の端にしてあげただけありがたいと思いなさい」

「強引だな」

「どっちが。それに……そう簡単に懐柔出来る私なんて刺激がないでしょ?」

「……困った、……強烈に誘われる。抱きてえ…」

「じゃあ、強烈に誘ってみる事ね」

その刺激の甘さによっては応えてしまう自分がいないわけじゃない。

そんな含みをたっぷりに彼の口に自分の口紅が付着した煙草を戻して傷痕に触れる。

「誘われるわ……」

白い髪や肌に映える艶やかな赤に。