『刺激』?

なんて、馬鹿馬鹿しい。

と、言うより、こうして解放されたというのにまんまとその感覚は彼に支配されたままなのだと気が付く無意識に再びの舌打ち。

『刺激』なんて響きは彼が音にして示した表現で、今までの生活で自分が『刺激』が欲しいだなんて思いも口にする事もなかったのだ。

求めるモノを『刺激』と言う言葉で捉えていた感覚などなかった。

馬鹿らしい。さっさと捨て去って忘れてしまえ。と、忘れかけていた充電中の携帯の元へと身を動かして眉根を寄せる。

ヒリヒリ、ヒリヒリ。

動く度に痛む内股すら彼の思惑の一つであったのか。

嫌でも思い出させる気配や記憶や。

『忘れちゃダメだよ』とあの笑顔と声音がベッタリと背後に張り付いて感じるから困ったものだ。

そんな見えぬ気配を追い払うように手にした携帯の電源を入れれば、真っ先に入り込んだのは

【今日はゴメン。誕生日おめでとう】

と、自分の誕生日ギリギリの時刻に受信したメッセージとその辺のメモにボールペンで描かれた下手くそなケーキの絵。

ああ、一応覚えていたのか、思い出したのか。

私の恋人である彼からのそれにやっとリアルを思い出して息を吐いたのに……。

ヒリヒリ、ヒリヒリ……。