本っ当……歳不相応で可愛く無いったら。

誰だ、あれを温厚王子なんて言って崇め奉ってる奴は!!

逃げ切るに決まってる。

さすがにいつまでもあの生活を続けられる筈もないと残っていた理性がグチグチと咎めに来ていた頃合いだったのだ。

ゲームの為にさらりと返された衣服や所持品。

当然鞄の中の携帯は黒い画面を広げて動きは見せず、まっすぐに帰宅した自宅の隅っこで今現在充電中だ。

そう、帰宅した。

自分の本当の住処に。

このご時世の女の一人暮らしだ。セキュリティ万全のマンションの一室は家主の許可が無ければ入室なんて不可能であろう。

つまりは、この部屋に身を置いていれば彼に捕まることなどない。

この秘められた彼の印に彼が触れる事はまず無いのだ。

設定された時間は24時間。

解放されたのは深夜の2時頃であった。

久々の外の空気はこんなに涼しいものだったのかと、不思議な感覚に陥りながらまっすぐに足を向けたのは自分のマンションだ。

そうして今に至って気が付けば窓の外の世界は光に満ちている。

特に何をするでもなく数時間だ。

あの何もない部屋で過ごしたせいで当然の情報ツールに興味も抱けず、TVもつけなければ音楽も聞かない。

そこに刺激を得られると感じられない。