そんな痛みに対する自分の価値観を再確認してしまえば、

「…もしかして、それが理由?」

「ん?何が?」

「セツが痛みや傷を伴っても喧嘩に走る理由」

確信を持った発言だった。

そうだろう。と疑問ではなく念押しの様な。

セツの素行の悪さは思っていた以上らしい。

夜な夜な闇に惹かれる様にその身を連れ出したかと思えば自分の物から他人の物から何かしら血生臭さを纏ってこの部屋に戻る。

そして誰をどうしたか、何人が相手であったのか、聞いてもいないのに事細か詳細を嬉々として告げてくるのだ。

まるで子供が学校であった事を親に報告するように。

学校では観賞用の品行方正で温厚な王子様の様な優等生。

私もまんまとそんな印象のままの彼だと思っていた。

だからこそ何がそんなに彼を駆り立てるのかと手当をしながら疑問であったのだ。

でも、今やっと答えを得たのではないか?

痛みによって自分の価値を得ようとしているのではないか。

そんな思考を読んだか否か、真っ先に響されたのはフッと軽い失笑だ。

「そんなご大層な理由なんてないよ」

「えっ、」

「理由をあげるならもっと単純だ」

「……」

「つまらないから」

「っ……」

「理由は誰かさんと変わらない。人がゲームやファッションに惹かれて手を伸ばすのと同じ。みんな無意識につまらない日常を少しでも別のモノで補おうとしてる。刺激と変化を求めてやまないのが人間の性でしょ?……刺激だよ」

刺激…か。

そう言われてしまうと納得せざるを得なくなる。