「ルージュ、」

呼び名に馴染みなくも、落される変に心地いい声音に目が眩み、

『いい子』だと撫でにくる感触に【ルージュ】いいか。と堕ちていく。

いや、やはり危険?そんな理性がひょっこり頭を持ち上げ、

「っ……白峰く」

「【セツ】だよ」

「……」

「ここでは、ルージュの前では【セツ】って呼んで」

それを言ったら、…その名を呼んだら本当に後戻り出来ない関係に踏み込むのではないだろうか?

なんとか浮上した微々たる理性が思考しろと叱責して喚いているというのに、そんな理性を黙らせるように私の唇をなぞりに来た彼の指先。

「……ルージュ、」

まるで『呼べ』と言わんばかりの呼びかけを落す笑みは優し気であるのに目だけが本能的に光を反射している。

知ってる。

この目に何を抗おうと煙に巻いて無意味だって事。

だったら……

「…………………セツ」

素直に堕ちた方がそうそうに楽になるというモノじゃなないか。

「フッ、快感すぎて飛びそう、」

「変態ね、」

………私がね。

人としてのプライドの崩壊である筈なのに、羞恥心がまともに作用しないなんて。

むしろ……酔うわ。

舌に得る刺激に。


味よりも、直後から巡る感覚に酔いしれ逆上せて依存する。

一時の精神の解放に。