モラルの境界線あやふやな状況下にさすがに危険予測の動悸がサイレンの様に鳴り響くも手遅れ、


「ねえ……俺専属になってよ、センセ」


悪魔の囁きだ。

今の私には酷く誘惑的な。

つまらないと諦めていた自分を【刺激】なんて物で誘惑する。

彼の提案の本質がどういう物かも分からぬ危ういものである現状ですでに心がざわついて抑制が難しいのだ。

そんな私の胸の内を見透かす様に笑う灰色の双眸が恐ろしくも刺激的で気持ちがいいなんて。

それすらも読み取り『頃合いだ』と図ったよう、僅かにも保たれていた健全を突き崩す様に彼の腕にふわりと抱かれた。

刹那に耳元で直に吹き込まれる、

「俺の傷を癒す保健医になって?

俺の心を満たす生き物になって?」

「生き物…て」

「何でもいいよ。猫でも犬でも鳥でもね、なりたい自分で気分のままに。つまらない人間な自分に飽きていたんでしょう?」

「っ……」

「だから……俺が飼ってあげる。その代わり俺が怪我してきたら手当して?」

「手当するのが対価みたいな言い回し……、対価を持ちだして何がプレゼント、」

「そう?俺としてはそれすらも寛大なプレゼントの一部だけど?」

「なにが_」

「人間に戻る事可能な逃げ道」

「っ……」

「保健医である事は今までの先生を構築していた人間としての一部でしょ?それを忘れないような時間を設ける……嫌になったらいつでも人に戻れる感覚の余地を残しておいてあげるんじゃない」

『優しいでしょ?』そんな風に吹き込まれた言葉に感じるのは、逃げ道なんて本当は用意されていないんじゃないかという畏怖が大幅。