そう思考では判断するのに音として疑問をぶつけられぬのは、見つめてくる彼の双眸がその疑問を口にする事を封じに来ているような。

笑っているのに鋭く本質的な双眸が『愚問だ』と、『つまらぬ事を確認するな』と告げてきているようで。

早熟に大人となったらしい彼の気迫はとても10代の見せる不安定な物ではない。

むしろ大人顔負けで下手したら適当な大人よりも……。

あっさり飲み込まれた自分も適当な大人の一人であるのか。

そんな私を良しとする様に浮かべていた笑みにクスリと更なる満足を上乗せしたような彼の手が伸び私の頬を指先が撫でる。

そんな瞬間に乾き始めている傷口から香った彼の血の匂いが、鼻孔に焼き付く様に絡んで目を細めた。

「誕生日だし、プレゼントをあげようか?」

「っ……な、」

「堪らなく欲しくて、多分一番喜ぶんじゃない?」

「白峯く__」

「【刺激】」

「…………」

「……センセに刺激をあげる」

ああ、いつの間にこんなに至近距離に。

血の匂いに感覚が眩んで、聴覚を犯しにくる囁きに更に困惑を引き起こされている間にその距離は埋められていたらしい。

気が付き我に返った時にはもう片方の頬も彼の掌の熱を与えられ、顔が陰る程寄った顔は恐ろしく精巧で端正で。

綺麗。

綺麗だからこそどこか恐ろしい。