他の若い女子であるならこんな眼差しに高揚し紅潮し意識して己惚れるんでしょうね。

若く希望に満ちた人生だと疑いを持っていない、今を謳歌している女ならね。

ときめくには現実的すぎる今の自分の胸は平常のリズムを刻んで、とりあえず血の痕を拭くか洗うかさせるべきだと彼に向かって口を開きかけた刹那、

「断ち切る割にはプライベートもつまらなそうじゃない」

「………」

「楽しい時間なんだから邪魔しないで。なんて感じには見えなかったけど?……痛っ…ははっ、……これは痛いとこ突くなっていう痛みの再現?」

「煩い、黙れって言う警告よ」

一応忠告はしてからの実行だ。

遠慮なしに傷痕に爪を立てて『黙れ』と示すのに、『痛い』と言いつつ笑みは絶やさず言葉も達者な彼には無意味な事かもしれないと学び始めた。

それを肯定するように彼の唇は閉じる事を知らずに意地の悪さを吐きだしたいらしく。

「つまりは……やっぱり『つまらなくて』どうでもよかったんじゃない。どうでもいいなんて思ってるならどうでもいいついでにその理由も聞かせてよ。……暇つぶしに」

「………暇つぶしにもならない理由よ。仕事から離れて自分を謳歌する時間でさえつまらない。恋人に自分の誕生日だって事も忘れられて会う約束よりも仕事優先される程つまらない女だってだけの話」

「へえ、センセ今日誕生日なの?」

「この歳になってきたら特別嬉しい催しでもないけどね。でも、忘れられたら虚しくてどうでもよくなるわ」

自棄と言うよりは諦めだ。

本当に足掻くことすら面倒だと求められるままにさらりと答えを落して冷静に息を吐く。