ピーク時を過ぎた店内はあまり人がいない。

「スーツ姿の男とパーマの女が…」

凱にヒソヒソと声をかけられて視線を向けると、メニューを見ながら楽しそうに選んでいる男女の2人組がいた。

「ああ、索さんがこの間連れてきた女の人だね」

彼女の顔を見たまひるは返事をした。

「香西さん…だっけか?

兄貴、相当なまでに彼女を気に入っていたみたいだから…」

もしかしたら他の男とつきあっているんじゃないか、それとも2股をかけられているんじゃないかと言う不安を隠せないみたいだ。

「凱さん、だからと言って決めつけるのはよくないよ」

そんな夫の様子にまひるは声をかけた。

「もしかしたら、仕事の関係者かも知れないじゃない。

香西さんのお兄さんかいとこだって言う可能性もある訳だし」

そう言ったまひるに、
「それもそうか」

凱は首を縦に振った。

 * * *