わたし、何を忘れたんだろう?

何かやらなきゃいけない仕事でもあったのかな?

特に心当たりは思い浮かばないけれど、高崎さんがわたしに追いついた。

「これ、忘れてます」

そう言って高崎さんが差し出したのは、スマートフォンだった。

しまった、デスクのうえに置いたままだった!

「すみません、ありがとうございます!」

わたしはお礼を言うと、高崎さんの手からスマートフォンを受け取った。

「間にあってよかったです」

高崎さんはホッとしたと言うように胸をなで下ろした。

「すみません、高崎さんもお忙しいのに」

そう言ったわたしに、
「いえ、僕も仕事が終わって帰るところでしたから」
と、高崎さんは答えた。