椅子に腰を下ろすと、
「ここはね、オムライスが美味しいんだ」

索様が言った。

「オムライスですか…。

じゃあ、それにします」

あたしが返事をしたことを確認すると、
「オムライスを2つ」

索様が凱さんに注文した。

「はい、オムライス2つね」

凱さんはサラサラとボールペンで紙に書くと、厨房の方へと足を向かわせたのだった。

その後ろ姿を見送ると、
「あの…弟さんは、どうして婿入りを?」

あたしは索様に聞いた。

「彼の奥さん――まひるさんって言うんだけど、彼女も『ニノミヤ硝子株式会社』の社員だったんだ」
と、索様が言った。

「えっ、そうなんですか?」

それは意外なことだった。