「ごめん、1人にさせて…」

由菜は泣きながら言った。

これは、由菜の気持ちが落ち着くのを待った方がいいかも知れない…。

「――わかった…」

そう判断したあたしはソファーから腰をあげると、カバンからスマートフォンを取り出した。

「落ち着いたら電話してね」

スマートフォンをズボンのポケットに入れると、パーカーを羽織った。

スニーカーを履くと、ドアを開けた。

バタン…

ドアが閉まったことを確認すると、あたしはマンションを出た。

空を見あげると、真っ黒になっていた。

「すっかり日が短くなったな…」

真っ黒な空を飾るように、半分の月が出ていた。

「今日は半月か…」

そう呟いた時、
「香西さん?」

聞き覚えのある声があたしを呼んだ。