(た、拓海さんとだって、一緒に出かけたことくらいあるじゃない…)

思い出して気を落ち着かせようとした紗綾だったが、心臓が収まる気配はない。

それどころか、だんだんと早くなっているような気がする。

「一体何が違うって言うんだろう…?」

紗綾は大きく深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。

「きっと、初めて街へ出かけるから不安になっているだけかも…」

そう結論をつけると、紗綾はソファーのうえで横になった。

視界に入ったのは白い天井だった。

(もしかして、私はエリックさんを好きになった?

いや、違う違う。

婚約者の件だって、彼が勝手に決めたようなものだし…。

それに関しては考えさせてくださいと言ったから、話自体は進んでいないし…)

紗綾は何度も何度も自分に言い聞かせた。