「――ッ、くっ…」

紗綾は声をあげて泣き出した。

今の今まで我慢していた感情や気持ちが涙と共に流れて行くような気がした。

「――どうして、こんな目にあわなきゃいけないんだろうって…」

「うん」

「――何にも悪いことをしていないのに、どうして…どうして…」

「うん」

両親を始めとする周りの人間にぶつけることができなかった気持ちをエリックは耳を傾けて聞いてくれた。

「――サーヤ…」

エリックが名前を呼んだ。

彼に名前を呼ばれたのは初めてだったので、紗綾は驚いた。

(今、私のことを名前で呼んでくれた…?)

その事実に驚いて視線を向けると、エリックの瞳と目があった。

「君は、誰よりも幸せになるべき人間だ」

エリックが唇を動かして、音を発した。