「私が16歳の時に父が経営していた工場が倒産しました。

父は働く気力を失くして酒浸りの日々を送るようになり、母はそんな父に愛想をつかして妹を連れて家を出ました」

そこまで話すと、紗綾はチラリと横目でエリックを見た。

突然のように身の上話を始めた自分を彼はどう思っているのだろうか?

変なヤツだと、思われていないだろうか?

「続けろ、話を始めたのは君からだ」

エリックは言った。

「私は日々の家計を支えるために、朝早くから夜遅くまで毎日のように働きました。

その2年後に父が亡くなって、私はあきらめてきた夢をかなえるために勉強を始めました。

そこから昼は働いて、夜は学校に通って勉強をする生活を送りました」

紗綾はしゃべり過ぎたと言うように深呼吸をした。