自分を見つめてくるその瞳から紗綾は目をそらした。

彼に見つめられると、心が見透かされそうだ。

現にエリックは自分が怯えていることに気づいている。

田辺に騙されてお金を奪われたうえに借金を背負わさせることになった、そんな自分の過去をエリックは見通しているのかも知れない。

「やっぱり、君は何かに怯えているんだな」

エリックが言った。

「お、怯えてなんかいません…」

呟くように言い返した紗綾だったが、
「じゃあ、目を見て話をしたっていいだろう。

相手の目を見て話せと、両親から教わらなかったのか?」

エリックが言い返した。

「――両親は、いません…」

紗綾は言った。

「いない?

それは、どう言うことなんだ?」

エリックは訳がわからないと言うように聞いてきた。