「用事はない、ただ君と話がしたいんだ」

エリックは紗綾の質問に答えた。

「私と話を、ですか?」

彼は何を言っているのだろうか?

(私と話をして、何になるって言うんだ…?)

「君のことが知りたい」

紗綾の心の中を読んだと言うように、エリックが言った。

それに驚いた紗綾は彼に視線を向けた。

「私を知って、どうするんですか…?」

エリックの言っている意味が全くと言っていいほどにわからない。

「君は俺の婚約者になったんだ、相手のことを知るのは当然のことだろう?」

「…意味がわからないです。

それに、私は“考える時間が欲しい”と言ったはずですが」

「何に怯えているんだ?」

エリックがじっと紗綾を見つめてきた。