子爵は新妻を独り占めしたい

「聞いたわよ、聞いたから顔を見にきたのよ」

カミラは言い返した。

「フフッ、なかなかのいい子でしょ?」

エミリーは得意気に笑った。

「見ず知らずの女を住まわせるって、どう言う神経をしてるの?」

それが癇にさわったと言うように、カミラが言った。

「見ず知らずも何も、かわいそうだから住まわせるんじゃないのよ。

この子――サーヤって言うんだけど、自分がどうしてここへきたのかもわからないのよ?」

エミリーはたしなめるようにカミラに言い返した。

「エミリー、もし彼女が悪い人だったらどうするの?

もしエリックに取り入られて財産を盗まれたら…」

「サーヤがそんな悪いことをする訳ないでしょ。

と言うか、考え過ぎよ」

目の前で繰り広げられている口論に、紗綾はどうすればいいのかわからなかった。