子爵は新妻を独り占めしたい

リビングに誰かが現れた。

クレオパトラを連想させる黒髪のボブに丸い顔がかわいらしい女の子だった。

年齢は１７歳か１８歳と言ったところだろう。

「あら、カミラじゃない」

彼女を見たエミリーは言った。

（カミラって、ミゲルさんの妹さんだよね？）

その名前に聞き覚えがあった紗綾はミゲルの妹であるカミラを見つめた。

切りそろえられた前髪の下の二重の大きな目に小さな鼻、形のいい赤い唇はまるでよくできた人形みたいである。

「ああ、あなたがお兄様が言ってた例の人ね」

紗綾と目があったとたん、カミラはそんなことを言った。

「カミラ様！」

クレアはやっと彼女に追いついたようだった。

「えっ…」

「あら、ミゲルから話を聞いたの？」

戸惑っている紗綾をさえぎるように、エミリーが言った。