子爵は新妻を独り占めしたい

けたたましいチャイムの音に、紗綾は椅子から転げ落ちそうになった。

「えっ、何?」

エミリーは訳がわからないと言う顔をしている。

来客に心当たりはないと言った様子だ。

食事を邪魔されたエリックは不気味だと言うように、息を吐いた。

「見てきます」

クレアはそう言うと、この場を後にした。

「あの…この時間に誰かがくる予定があったんですか?」

そう聞いた紗綾に、
「…全く心当たりがないんだけど」

エミリーは答えて、エリックに視線を向けた。

エリックはプイッと姉から目をそらした。

どうやら、彼も知らないみたいだ。

「突然困ります!

時間を改めてきてください!」

クレアが大きな声で怒鳴っているのと同時に、カツカツと早足でこちらへ向かってくる足音が聞こえた。