子爵は新妻を独り占めしたい

(す、すごい…)

部屋の中を見回した紗綾は、ただただ呆然とすることしかできなかった。

黄色いバラの模様のカーテンに大人2人が横になってもまだ余裕はありそうな大きなベッド、オレンジ色のじゅうたんのうえにはアンティーク調のデザインのソファーやテーブル、クローゼットが置いてあった。

南向きの大きな窓からは太陽の日差しが差し込んでいて、この部屋を照らしている。

(私が住んでいた家よりもすごい広いんですけど…)

その場で突っ立っている紗綾に、
「お気に召しましたか?」

クレアが声をかけてきた。

「あの…」

「何か気に入らない点が?」

「いえ、違います」

紗綾は首を横に振ると、
「その…本当に、いいんですか?

こんな見知らぬ人に、こんな大きなお部屋を…」
と、戸惑いながら言った。