子爵は新妻を独り占めしたい

(何か話した方がいいかな…?)

自分たちの間には沈黙が流れていて、紗綾は不安になった。

「あの…」

紗綾は話を切り出すと、
「広い家ですね」
と、クレアに話しかけた。

「そうですね」

クレアは振り返ると、そう言った。

「エミリーさんの幼なじみのミゲルさんから聞いたんですけれど、子爵家だと」

「ええ、そうですよ」

「こう聞くのは失礼だと思いますけれど、ご両親はいないんですか?

先ほど、エミリーさんが自分のことを当主だとおっしゃっていたので」

そう言った紗綾に、
「はい、2人の両親は3年前に流行病でお亡くなりになったんです」
と、クレアが言い返した。

「そ、そうですか…」

(私の方から聞いたとは言え、とんでもないことを聞いちゃったかも…)

紗綾は自分が出した質問を反省した。