子爵は新妻を独り占めしたい

「まあ、そうなの。

説明する手間が省けたわ。

彼女――サーヤって言うんだけど――に、すぐに部屋の手配をお願いしてくれるかしら?

そうね、2階の南側の部屋がいいかしらね」

そう言って指示を出したエミリーに、
「かしこまりました」

クレアは会釈をするように頭を下げた。

「私は食事の用意をするから」

エミリーはそう言うと、この場から離れたのだった。

「えっ…」

それまでそばにいてくれた彼女が離れてしまい、紗綾は心細くなった。

「それでは、ご案内させていただきます。

どうぞ、こちらへ」

「あ、はい…」

クレアに案内されるように、紗綾は歩き出した。

先頭を彼女が歩いていて、自分はその後を追っていると言った方が正しいかも知れない。