見下ろしたら、そこは海だった。

(冷たいだろうな…)

冷たい風が吹いている断崖絶壁に立ちながら、そんなことを心の中で呟いた。

見あげると、黒い空に銀色の月が輝いていた。

スカートのポケットからスマートフォンを取り出すと、メール画面を表示させた。

寒さで震えている指を動かしながら、画面をタップして文章を作成した。

『生きていることが嫌になりました

誰も私を必要としてくれないこの世界から出て行きます

さようなら』

それまで履いていた靴を脱ぐと、そのうえにスマートフォンを置いた。

前を見つめると、深呼吸をした。

「――さよなら、世界…」

そう呟いた後、冷たい海に向かって、その身を投げたのだった。