優斗に連れてこられたのは、朝はあまり使われない渡り廊下の一角。



特に目立たない場所だ。



「優斗、いきなりどうし……」



私がまだ言いかけてる途中に優斗は掴んでいた手を離し、突然私を抱きしめる。



「ちょ、優斗!?」
「沙織ってなんでこんなに可愛いの?」



「はい?」



ダメだ、話が通じてない。
優斗が何をしたいのかもわからない。



「いいから離れてってば……」



「嫌だよ。だって沙織、悲しかったんだよね?
俺に距離置くって言われて。」



「なっ……!」



誠、優斗に言いやがったのか!



「そんなの一言も言ってない!」



悲しいとは言ってないから事実だ。
ただ泣いてただけ。



「ごめんね、誤解させちゃったね。
距離置くっていうのは学校以外でのことだから。


最近さ、登下校も一緒の時が多いでしょ?


でもこれからは登下校を別々にして、学校以外は距離置くってこと。」



学校以外では距離置く?
学校では置かないのに?



「なんで…?」
「沙織が危ないから。」



「危ない?」



「俺にも色々あるんだよ。だから登下校一緒にできない分、学校でさらに可愛がってあげるからね。」



「か、可愛がらなくていいから!」



もっと酷くなるのは困る。
これが土曜日、誠が言ってたことなのか。