“好き”がほしくて〜恋人未満のこの関係〜






「それじゃあ意味ないから!
……って待って、あれ忘れてた。」



休憩、という言葉で何故か思い出したのは昨日作ったブラウニーを家の冷蔵庫に入れっぱなしだったこと。



「何が?」



「誠に作ったブラウニー、家に忘れちゃった。
優斗も食べたいんでしょ?」



私がこう言ったら誠が反応を示し、ようやくこっちを向いた。



どんだけ好きなの。



「だから家まで取ってくるね。」
「ああ。」



久しぶりに口を開いた誠。
今は笑顔じゃないけど、雰囲気がどこか明るかった。



ようやく優斗から離れ、誠の家を後にした。



「………あっ。」



私の家の前に来た時、鞄の中に鍵を忘れたことに気づいた。



親がいるかも、と思いインターフォンを鳴らすけど反応なし。



不在のようだ。
お父さんもお母さんも出かけているのだろう。



一緒に出かけてるのかな?



こうなれば仕方ないから一度誠の家へと戻る。
そしてリビングに入ろうとした、その時……





「今までは落ち着いてたけど、また沙織とは距離置いた方がいいな。」




いつもよりトーンを落とした優斗の声がリビングから聞こえてきて、固まってしまう。