「沙織あったかい。」
「………。」
「あれー?沙織?」
無視しろ、無視。
そうすればいつか諦めて離れるだろう。
心の中で何度も“無視”と唱える。
だけど優斗が大人しくなるわけなくて……
「………ひゃ……ちょ、何して……!」
突然耳を噛まれた。
「噛まないでよ!
この変態!」
人の耳噛むとか何者!?
どういう趣味!?
「噛んでないよ?」
「どう考えても噛んだでしょ!」
「甘噛み。」
もはや、呆れるしかない。
甘噛みも噛んでるのと一緒だ。
「もう離れて。
勉強妨害するのは無理だから。」
「なんでー?
じゃあ舐めるのだったらいいの?」
「だから……!
なんでその発想に行き着くわけ?
耳を噛んだり舐めたりする人間がどこにいるのよ!」
「ここ。
それに案外探せばいるよ?
だって人って耳弱いから。」
確かに耳弱いけど……!
それでも今するのはおかしい!
順序がある。



