「どーせなら沙織と一緒にやろうと思って。」
「嫌だ。集中できないって言ったよね?」
「ちょっとだけ。
教えてあげたお礼ってことで。」
それを言われてしまえば何も言えない。
やっぱり誠に教えてもらえばよかった。
前にいる誠に視線を向けるけど、まるで私たちの間に見えない壁があるようでこっちを見ようともしない。
真剣に問題を解いている。
私たちのやりとりがどうでもよくて、うるさいのも慣れたのだろう。
これは邪魔しない方がいいやつ、だよね?
「……わかった。
じゃあ暗記系するね。」
「なんでもいいよ。
沙織補給をしたいだけだから。」
いや、今一緒に勉強するって言ったよね?
どれだけ嘘つきなんだ優斗は。
呆れつつ教科書とプリントを開ける。
優斗を気にするなって心の中で唱えるけど、優斗がぎゅっと抱きしめてくるから集中が削がれてしまう。



