「……お前らまじで周り見ろ。」
「……っ!?」
その時、誠の声が聞こえてきて今ここが電車の中だと思い出す。
どうしよう、恥ずかし過ぎてもう周り見れない……。
「沙織、照れてる。
今までもこんな感じだったんだよ?
気にしないでいいのに。」
「う、うるさい…!」
逆にどうして優斗が平気なのか、理由が知りたい。
「あー、もうどうしよう。
照れてる沙織も可愛い抱きしめたい。」
「わかったから、今は場所考えて?」
「えー、わかった……。」
少し落ち込んだ優斗。
かと思えば私を見て、また笑みを浮かべた。
「じゃあ続きはまた後で、ね?」
含みをもたせたその言い方に顔があつくなるのがわかった。
「優斗なんか嫌いだ……」
「俺は好き。大好きだよ沙織。」
好きと言われないのも辛いけど、言われすぎるのもドキドキして心臓がもたない。
それでも……
ずっとほしかった“好き”を、今は当たり前のように言われる。
それがたまらなく嬉しくて、幸せで………
優斗を見ると、優斗も私を見て優しく笑っていて。
そうだ、もう私たちは恋人未満の関係じゃなくて……
恋人以上の関係になれたのだとようやく実感して、緩みそうになった頬を、私はまた頑張って引き締め直した。
END



