「沙織。」
「……え…?」
改札を出るとすぐ、誰かに名前を呼ばれた。
俯き加減だった顔を上げると、そこには……
「ま、こと……」
どこか心配そうな顔で私を見つめる誠が立っていた。
「どうしているの…?」
「……優斗から連絡あった。」
私が近づくより先に誠が私に近づく。
優斗から連絡があった?
じゃあ、もしかして……
そう思い、じっと誠を見つめれば頭の上に手が置かれる。
「沙織、よく頑張ったな。
……きっと逃げてるだけなんだよ、俺たちが。」
後半の言葉の意味はよくわからなかったけど、頭の上に置かれた手が温かくて涙が自然とこぼれてしまう。
ずっと我慢してた。
でも泣いたら変わってしまう気がした。
優斗との関係が。
いつも通りに戻れない気がして、怖くて我慢してたの。
だからこそ誠が来てくれて、側にいてくれることがこんなにも落ち着いて……
素の自分でいられるんだ。