優斗の腕を掴み、引っ張る。



「送ってくれるんでしょ?
だったら立って!」



私がいつも通り笑ってみせると、優斗は優しく目を細めて笑った。



「ありがとう、沙織。」



ごめんねも辛いけど、ありがとうと言われても泣きたくなる。



だけど無理矢理笑って、私は優斗の腕を離した。



そして優斗の前を歩く。



家を出た後、駅へと向かう帰り道は並んで歩いていたけどお互い顔も見ようとせず。



静かな沈黙だけが流れる。



その中で、優斗にそっとつながれた手だけが温かい。



願わくば、どうかこの手を離さないで……




だけどそんなこと無理だし、わがままだって言えない。



あっという間に駅に着き、私は優斗にお礼を言った。



「送ってくれてありがとう。」



なるべく優斗の顔を見ないで、手を離そうとしたその時……



つながれた手を引かれ、そのまま優斗に抱きしめられた。