「父親だけが母親のこと好きで、結婚したのはいいけどそこからずっと喧嘩ばっか。



母親は俺を産んだらまたすぐ風俗の仕事に戻って、それを父親が反対して。



それは物心ついた頃もずっと言い合ってた。



最終的に離婚して、母親の方に引き取られて。
そこからまた要らないもの扱いされた。



俺が人生狂わせた、とか邪魔だから夜まで帰ってくるなって言って、渡されるのはいつもお金。」



想像、できなかった。



今よりもずっと幼い歳なのに、そんな酷い扱いされていたなんて。



苦しい思いをしていたなんて。



そんな傷を負った優斗を、私はどうして知ろうとしなかったんだろう。



気づかなかった自分が悔しい。



「それで最後は家に置いてかれて、母親帰ってこなくて。



そこからはあまり覚えてなくて、児童養護施設にいたのかな、多分。



そんな感じで知らない間に時間だけが流れてて、そしたらある日知らない男女二人が俺の前に現れて。



養子として引き取られることなって、それが今の両親の元で。



いきなり今日から二人が両親だよって言われても、信じられないしわけわかんないし。



それで俺、中学の時から悪いことばっかして心配かけたと思うけど何も言ってこないからずっとそれ続けててさ。



だから沙織と誠の関係を見た時、自分が馬鹿らしくなったんだ。



本当に俺、要らない人間だなって。」



なんて声をかければいいのか、わからなかったけど。



これだけは言いたかった。



「優斗は、必要だよ。
要らなくなんか、ない。」



どうか自分を必要のない人間だと、思わないで。