部屋に戻るなり、優斗は私の腕を掴んでいた手を離した。
「…ごめん、変なところ見せちゃったね。」
謝ること、ないのに。
優斗は眉を下げて謝った。
それからまたベッドの上に座った優斗は私を呼ぶ。
「沙織、こっちおいで。」
その声はいつもより低く落ち着いていて、掠れていた。
いつもなら嫌というけど、今は素直に優斗の元へと行く。
そしたら優斗は笑った。
力なく。
そんな優斗の前に座ると、すぐぎゅっと後ろから抱きしめられる。
少し苦しいけど、どこか弱々しい感じがした。
「やっぱり沙織は落ち着くなぁ。」
いつものように軽い調子で返すべきなのかもしれない。
気にならないふりをした方が優斗のためかもしれない。
なのに……
それができなかった。



