「沙織ー?
今思ったんだけどトイレの場所わかっ……」
きっとトイレの場所を教えに来ようとして、たまたま降りてきたんだと思う。
それも優斗の優しさなんだろうけどタイミング悪いな……なんて思っていたら
一階に降りてきた優斗が私と女の人を見て固まってしまう。
「えっと……」
嫌だったのかな、お母さんと会われるの。
なんて言おうか悩んでいたら、先に優斗が笑顔を浮かべた。
どこか偽物の笑顔。
「里美(さとみ)さん、帰ってたんですね。」
それは自然な話し方だった。
自然に敬語で、どこか距離をあけて話す優斗に私は驚く。
いま、優斗はなんて……?
里美さん?
どうして敬語なの?
お母さんじゃ、ないの?
ぱっと里美さんと言われた女の人の方を向けば、どこか切なげな表情をしていて。
何か理由があるっていうのはすぐにわかった。



