「沙織が怒っちゃったよ。」
「怒らせたのは優斗だか……っ!?」
騙された気分になって言い返そうとすれば、突然優斗に首筋を指でなぞられる。
思わず身体が反応して、声が出なくなってしまった。
「ちょっ、ゆう」
「何?」
今度は耳元で甘く囁かれ、顔があつくなる。
わざとやってる。
これは完璧に確信犯。
「沙織の反応って本当にたまんないね。
もっといじめたくなっちゃうなぁ。」
そんな本気のトーンで言われても、何も言い返せない。
心臓の音がどんどん大きくなっていく。
このままでは完全に優斗のペースだ。
いつもなら逃げられるけど、ここは教室とは違って家だ。
逃げ場はないんじゃ…?
「ねぇ、沙織……」
「ゆ、うと!トイレ!トイレ借ります!!」
それなら切り札として優斗に誘われる前に、お手洗いを借りるというのを口実にしてこの場を切り抜けるしかない。
本当はトイレなんて全然行きたくないけど!



