「ねぇ、沙織。」
「な、なに……?」
「キスしていい?」
「……へ?」
思わず間抜けな声が出てしまった。
そんな堂々と聞かれて、いいよなんて言えるはずがない。
かといって無理とも言えない。
いつもの調子の優斗じゃなくて、男の顔をした優斗がいたから。
ダメだ、断れない。
じっと私の返事を待つ優斗。
もう黙ってる時点で肯定と受け取ってほしいんだけど……
ほんの少しだけ頭を縦に振り、頷く。
これって結構恥ずかしい。
第一キスしていいかなんて聞き方ずるい。
多分今、自分の顔真っ赤な気がする。
顔があつい。
そんな中、優斗は満足そうに軽く微笑んだ後、ゆっくり近づいてくる。
だから私も受け入れるように目を閉じる。
そして、優しく唇を重ねられた。
それだけで鼓動が速くなって、全身があつくなって。
でも嬉しくて、離してほしくなくて。
私がこんなんだから結局優斗と、中途半端な関係が続いてるんだよね。
わかってるのに、どうしようもない。



