背中に回された誠の手が私の腕を掴んだ。
「沙織、自分の手で耳塞げ。」
そう言われ、誠に誘導されながら耳元に手をやる。
その手で耳を塞ぐ前に目を開け誠を見るけど、誠の表情は優しかった。
「目、開けるなって。」
「私、信じるからね…?誠が無事だって。」
「当たり前だろ。」
その言葉を信じ、もう一度目を閉じて耳をきつく塞ぐ。
暗闇の中、誠の匂いが遠ざかっていく。
そして最後に、頭の上に手をぽんっと置かれた後、今度こそ誠が離れていった。
少しして男数人の声が耳を塞いでいても小さく聞こえてくる。
お願い、どうか無事でいて……。
私には何もできなくて、ただじっと待つことしかできなかった。
それが悲しくて、力の差を感じて。
また泣きそうになった。



