「沙織泣きすぎ。
もう周りいねぇから早く出るぞ。」
「ううっ……余韻だよ余韻!!」
誠はそんな私を無視して立ち上がってしまう。
「ほら、立て。」
そう言ったかと思えば私の腕を掴んで無理矢理立ち上がらせる誠。
「わわっ……!」
あまりに突然のことでバランスを崩し、誠にしがみつく形になる。
乱暴にしすぎでしょ、この人!
酷くない?
レディーファーストって言葉知らないのかな!?
「悪い、引っ張りすぎた。」
「本当だよもう、いくらなんで、も……」
いつもの調子で返そうと思い、顔を上げた瞬間、私は思わず言葉を失ってしまった。
あまりにも、誠との距離が近かったから。
さすがに幼なじみで慣れてるからと言って相手はもう男の人だ。
それにかっこいいわけで、その距離に固まってしまう。
少し動いてしまえば届く位置。
どうやら向こうも私を見て、少し目を見張り固まっている。



