「……っ。」
「今の話は全部忘れていいから。
ただ俺から離れるな。」
「わ、わかった。」
大人しくして頷きながら返事をすると、ようやく誠は私の肩にまわした手を離してくれる。
これでようやく解放された。
少しだけ暑いけど、多分館内だからってことにしておこう。
手で顔を仰いでスクリーンに視線を移す。
よかった。
まだ始まってすぐだから全然大丈夫だった。
あのまま離されてなかったら大事な最初の方のシーンが観れなかったところだよ。
なんて思いながら映画に集中する。
切なくも甘いストーリーは、どんどん観るものを引き込んでいく。
ハグとかキスシーンもあるわけで。
隣に誠がいると思えば変な感じ。
ちゃんと観てるのかな、誠。
寝てそう……と思いながらちらっと横を見ると、意外にもスクリーンをじっと見つめてた。
こんなイケメンがこんな無表情で恋愛映画観てるって……ダメだ、笑ってしまう。
悪気はないけどおかしい。
特にあの誠が恋愛映画って。



