ただ黙って涙を拭う私の頭の上に誠の手が置かれた。



「ほら、泣き止め。
目立つだろ。」



「ご、ごめん……」



無理矢理涙を抑える。
大丈夫、大丈夫。



「……ふっ、ブッサイク。」
「ひ、ひどい…!本当に誠って最低!」



「なら早く行くぞ。」
「うん……」



誠はこうやって私を元気づけようとしてくれる。



そういうところ、本当に昔から変わらない。
誠の優しい部分。



駅に着き、やってきた電車に乗る。
優斗が乗ってくる、いつもの車両に。



しばらく電車に揺られて、優斗の駅を待つ。



でもまだどこか不安はあった。
もしかしたら今日も来ないんじゃないかって。



その不安とともに優斗の駅が見える。



そして、いつもと同じ場所に……



優斗が、いた。
ドア越しに私と目が合う。



優斗は嬉しそうに笑って私を見た。



ゆっくりとドアが開き、そこから優斗が入ってくる。



「……沙織。」



久しぶりに聞いた、私を呼ぶ声。
そもそも優斗の声自体久しぶりに聞いた。