車は発車し、奏時と葉汰は会話を始めた。

「これで間に合うねカナ」

「うん」

高校までは、車で5分で着く。


「それにしても、葉汰も奏時もそんなに一緒にいてあきないか?」

龍汰は、普通にふざけて聞いてみたのだろう。

「…全然あきな…」

龍汰の、質問に答えようとした葉汰の代わりに、奏時が答えた。

「飽きないよ。…ようちゃんがいるから俺は、こうやって生きてるんだから」

滅多に聞けない奏の声なのに、長々スラスラ話していた。

(カナが、話してる)

今更だが、奏時と葉汰は、お互いを、ようちゃん、カナちゃんと呼んでいる。

「奏時、ありがとうな。」

「…はい。…」

その頃、葉汰は、驚きと、奏時に褒められた照れによる赤面と戦っていた。

「ようちゃん、顔赤いよ」

奏時はニヤニヤと葉汰に顔を近づけた。

「ほっとけ」

葉汰は奏時を押しのけると、同時に奏時の言葉が気になった。

「…ん?カナ、俺なんかしたっけ」

(カナが死にたいって言ってたの聞いたことないし、助けたことないよな)

「秘密」

「カナー、意地悪すんなよー」


「ほら、がんばってこい!」

疑問は残ったままだが龍汰の声かけで学校に着いたことを知り、車を降りた。