1階へ降りると、葉汰の兄である龍汰が椅子に座り、テレビを見ていた。

「おはよう、兄ちゃん。もう8時20だよ」

龍汰は、葉汰の方へ振り返り、笑いながら挨拶してきた。

「おはよう葉汰、また怒られてたじゃん」

「笑うなよ、姉ちゃん怖いんだからな」

「笑ってない、笑ってない」

そう言いながらも笑って、龍汰は両親がいる仏壇の部屋に入っていった。

「俺も手合わせる!」

葉汰も慌てて、ついて行く。

葉汰と龍汰は仏壇のお母さん、お父さんの写真に手を合わせた。

わかってるかもしれないが、紫苑家には、両親が早くに死に、兄弟で暮らしているのだ。

(母さんと父さん、今日もすごく幸せそうに笑ってる。)

葉汰はふと、自分の恋愛を思い出した。


「あのさ兄ちゃん、好きな人同士は天国でも一緒なのかな」

「母さん、父さん。どうやら葉汰は、恋愛の迷路に踏み混んだらしい」

「…っ!え!!ちっちがう!」

(兄ちゃんは、頭の回転が早いもんだ)

「そ?」

龍汰は、からかうような、いたずらな顔して笑って葉汰を見た。

「…。」

葉汰は図星で、声がでないでいた。
なぜなら、片思いの相手と結ばれたら、ずっと一緒かななんてて考えていたからなのだ。


「ま、それは良いとして、学校送ってやるから」

そう言って龍汰は車に行った。