暫くして後ろを振り返り、追ってこないことを確認してから足を止めた。


くそっ…朝から無駄に体力使った…


腰を折り荒い呼吸を二人で整えていたが、整い終わる前にたー子が口を開いた。


「あー子、ごめんね…私、あー子が、痴漢に、あって、るの、全然、気付かなくて…」


「そんな、謝んないでよ。悪いのは、あの、痴漢野郎なんだから。」


今は痴漢野郎より、髭面イケメン野郎の方がムカツクけどね。


「あーあ、痴漢野郎のせいで、部活遅れちゃったよ~
たー子も私に付き合わせて部活遅刻させてごめんね。」


「そんなこと気にしないで。あー子を一人で行かせる方が心配だし。あっ、それから部長には連絡しておいたから。」


「たー子、本当ありがとうー。」


この感謝の気持ちを最大限に表すのに、ぎゅっと抱きつきたかったが…
この暑さの中じゃ嫌がらせにしかならないだろうとそれは控えた。


それから私達は学校まで歩いて行くことにした。

さっき下りたバス停は、下りる予定のバス停の一つ前の停留所だった。
この時間なら次のバスを待っているよりも歩いて行った方が早い。

私達は照りつける日差しの中、日陰を探して進んだ。

歩いたのは一区間だけだが、校門までくる頃には喉はからからに乾ききっていた。