オロオロとしていると、玄関の方からお兄ちゃんの声も聞こえ始めた。
こっそりと部屋の扉近くの壁まで行くと、耳を澄ませ玄関での会話を聞く。
「…山崎先生を殴ったのは、俺です」
「!?」
確かにお兄ちゃんの声でそう聞こえた。
「白石!?お前…」
山崎先生の驚く声も聞こえてくる。
「先生ということは…この少年は、山崎さんの生徒さんということでしょうか?」
「はい、そうです」
お兄ちゃんの落ち着いた声で、返事をしている。
「間違いないでしょうか?山崎さん」
「間違いないですが…白石が殴ったというのは違います。俺が…いや、私が殴らせるように煽ってしまったからなんです」
「どういう意味でしょう?揉め事の原因は?」
「それは…」
警察の人と山崎先生の会話のやりとりで、言葉が詰まってしまっている。
揉め事の原因…
それは、きっと私のせいー…
「あの…!」
勇気を出して部屋のドアから顔を出したがー…
「俺が学業のことでストレスが溜まっていたから、山崎先生に相談したんです。けど、山崎先生の意見に納得できなくてつい手が出てしまいました。山崎先生は優しいので殴らせたと言いましたが、俺が山崎先生を殴ってしまったのは事実です」
警察の人を前にしても動じずに、スラスラと言葉が出てくるお兄ちゃんの姿につい、見惚れてしまった。
すごい…
本当のことは言ってないのにー…
部屋のドアから顔を出したまま感心しているとー…
「それはわかりました。ところで、あの子も生徒さんですか?」
「!」
しまったー…
警察の人と目が合い、指をさされてしまった。



