「わたしっ……もう高原好きなの止めるっ」



天が涙と共に吐き出した一言にドア一枚を隔てた廊下で固まる約二名と絵那。




「待って天! 話が飛び過ぎ……って言うか、極端過ぎだよ!」



教室のドア越しに聞こえる絵那の声に思わず大きく頷く慶斗。



傍らには全く状況が飲み込めない皇楽が相変わらず直立したまま。



「絵那と仲良しで居られないなら高原好きなの止める……」


「だからっ! わたしは高原くんのこと全然好きじゃないってば」



絵那が皇楽に構っていたのはあくまで天との距離を近付けない為。



まさか。
皇楽が自分に想いを寄せていたなんてことも知らず発した言葉は、ドアの向こうで直立してる男に確実にダメージを与えていた。



「……ご愁傷様。皇楽」


「……うっせぇ」



自分の居ないところで伝えてもいない気持ちが失恋決定となり、慶斗は心底憐れむような視線を皇楽に投げかける。



それを鬱陶しそうに跳ね返す皇楽が立ち去ろうと身を翻したとき、



「……それだけじゃないよ」



小さく呟いた天の声に思わず皇楽が足を止めた。