結局。
朗楽のお迎えは藍楽に頼むことになり、愛しのお姫様(あくまで候補)である絵那との放課後デートに興じる皇楽。



「……高原、ちゃんとやってるじゃん」



可愛らしく微笑む絵那を傍らに携えた皇楽の表情は、いつも隣からぼんやり見上げる仏頂面なんて微塵も感じさせない。



小股な絵那の歩調に合わせ、時折笑いかける絵那に柔らかく微笑み返す。



それを偵察と称して十数メートル先から覗き見る天と慶斗。



「まぁ、続かないだけで数はこなしてるからね。皇楽」


「ふーん……」



慶斗の言葉も上の空で天は惜しみなく笑みを浮かべ続けている皇楽を見つめていた。



あんなに特別な笑顔を絶やすことなく見せてるのは、それほど絵那が特別と言うことなのか……。




「さてとっ。高原も上手いこと絵那をエスコートしてるわけだし……帰るとしようかな」



絵那が心配だから。



なんて言い訳を作ってまで繰り出した偵察も、結局は胸と頭のモヤモヤを増幅させるだけ。



「黒沢。わざわざ付き合ってくれてありがとっ」



何やら言いたげな渋い表情で自分を見つめる慶斗に明るく笑いかけ、天は足早にその場を離れて行くのだった。