「いつから居たんだよっ」


「あの巨女にバレたって痛くも痒くも無い……辺り。あっ、巨女って言うなっ!」


「うっせぇよ!」


「結構前から居たんだな。高宮」




入るタイミングを窺っていたとあくまで主張する天に、



「立ち聞きって趣味悪過ぎだろ。巨女がっ」



絵那にバレてしまう確率が格段に跳ね上がった皇楽は苛立たしげに舌打ちをかます。



「あれれ? わたしにそんな態度取っちゃっていいわけぇ?」



絵那の親友。


強力な肩書きを持つ天に、歯痒くも太刀打ちする術の無い皇楽は、


「先戻る」



眉間に極太のシワを作りながら更衣室から出て行ってしまった。



「なに皇楽その顔は! 接客の基本は笑顔でしょ! ホラッ! 笑って笑って!!」


「……邪魔ッス」



ドア越しに皇楽のご機嫌を窺う店長の三秒で無視された声だけが虚しく聞こえる。



「……高宮」


「んっ?」


「気にするなよ。皇楽が言ったこと」



ずっと更衣室の前で話を聞いていた天に、慶斗はいつになく神妙な顔付きでこう呟いた。