「天さんっ」


「また……。よく飽きないねぇ」



放課後の廊下。

絵那を靴箱に待たせ、忘れ物を取りに戻っていた天が背中を取られる。



「当たり前っ。天さんは俺の運命の人だから」



こう言って満足そうに笑いながら更に両腕の力を強める。



「運命っ? 何言っ……」

「……クセェ台詞だな。ウケ狙いか?」



腕を振り解こうともがく天の真ん前に立ちふさがる紺色のセーター。



ゆっくりと視線を上げれば、



「高原っ」



不機嫌丸出しの皇楽が天に視線を寄越すことなく涼希と睨み合っていた。



「邪魔しないでくださいよ。先輩は関係無いんでしょっ? ねっ、天さん」

「ちょ、ちょっと涼希!」



皇楽の不機嫌面を物ともせず、涼希がイヤミを吐きながら天にゆっくりと顔を寄せていく。



それに動揺した天の瞳が大きく揺らぐ。

その視線が正面の皇楽と重なった瞬間、



「えっ!! ……ちょ、ちょっと!!」



おもむろに天の手を掴みんで歩き出した皇楽は、一切後ろを振り向くコト無く廊下を足早に突き進んで行った。